読書のすすめ 第21号

★『8の殺人』(推理小説)

 今回紹介するのは『8の殺人』(我孫子武丸)です。ジャンルは推理小説です。推理小説の大きな醍醐味は、事件の犯人(+トリック)を当てるのを楽しむことになるでしょうか。

 この小説では、8の字型の館で起きる殺人事件を、キャラの濃い3兄弟が解決します。長男→真面目、次男→キレ者、長女→クセ者という感じです。解決役が警察官の長男ではなく、喫茶店のマスターである次男だというのも中々面白いです。一見単純と思われた殺人事件が予想以上に複雑となり、この次男の頭脳が活躍します。また、この本の作者は一時期人気を博した『かまいたちの夜』というゲームの原作者でもあります。ゲーム同様、この本でも結末のドンデン返しに感心してしまいました。私は推理小説に限らず、予想外の展開をするストーリーに弱いようです。


 さて、推理小説というのは、内容を楽しむことの他に、「論理力が鍛えられる」という良い点があると思います。犯人を読者に納得させるために、「なぜそいつが犯人なのか」、「なぜ他の人ではダメなのか」が順序立てて説明されています。「この時間に動けたのは○○だけだ。」とか「△△には動機が無い。」とかですね。理由と結論が明快に書いてあるわけです。こういう文をたくさん読んでいると、自然と論理力がつくように思います(例えば接続詞の使い方)。論理力は非常に役立つ力です。身につけておくと将来の武器になるでしょう。身近なケースとしては、他の人に対してわかりやすい説明をする際に役立ちます。学生のみなさんにとって直近の大きなケースとしては、入試の面接が挙げられますよね。また、もっと身近なケースとしては、例えば「友達に自分の意見を聞いてもらう場面」があります。確かに、勢いで説得という方法もあります。しかし、それだと従う側にとっては後味が悪いことがありますよね。そんな時に「これってこうだから、こうしよう。」みたいに、相手にわかりやすい説明をつけてあげることができればよりgoodではないでしょうか。スッキリ納得という場面が増えてくると思います。何より自己中と思われないためにもいいかもしれませんね(笑)。